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庄内南部地域 大腿骨近位部骨折地域連携パス集計表 第1号

平成26年6月

集計表をご希望の方は、地域医療連携室ほたる(TEL:0235-29-3021)までご連絡ください。

あとがき

 大腿骨近位部骨折術後地域連携パスは、管理病院の荘内病院整形外科病棟から回復期病院への円滑な転院を促進するため2006 年から実施された。パスは、術後2 週間で管理病院を転院し合計8 週(56 日)で回復期病院退院を目標とした。当初は、荷重制限・血液浄化療法・重度栄養を含む重篤な内科的合併症をパス適応外としていた。必要な情報はIT 化され双方向性に情報が共有された運用された。2009 年に当地区の脳卒中パスと同様に転院を問わず、すべての術後者の基本情報が登録されるようになった。2012 年に非荷重者、行動症状などの項目が追加され現在のオーバービューとなった。

 今回、大腿骨近位部骨折術後生存者の障害像を明らかにすることを目的に2009 年4 月から2013 年3 月の4 年間の連携パス登録データ945 件を集計した。当地区の大腿骨近位部骨折の治療体制は、可能な限り早期(0-1 日)に手術が行われ、術後者の約80%に連携パスが使用されて概ね14 日で転院、全入院期間は90 日であった。多くの受傷者が受傷前から認知機能や運動機能が低下し転倒で骨折していた。そして退院時には、さらに運動機能・認知機能が低下して生活機能が悪化していることが明らかとなった。

 受傷前の生活機能障害の原因は、生活不活発病である。認知症や生活習慣病と関連した脳血管障害で起こる廃用症候群、骨折や骨関節疾患などの運動器疾患で起こるロコモティブ症候群および心肺疾患で起こるディコンディショニングは環境因子と相まって生活を不活発にする。加えて栄養状態の悪化とサルコペニは、悪循環を形成して老年症候群と摂食嚥下障害を増悪させ、転倒・嚥下性肺炎のリスクとなり要介護状態を促進する。この更なる増悪促進要因が大腿骨近位部骨折である。

 この骨折は、骨粗鬆症等の骨脆弱性と転倒で起こり、多くの研究・検診・予防・治療が啓発され実施されている。しかし、大腿骨近位部骨折受傷者再発予防に必要な骨粗鬆症治療が十分行われておらず、病診連携での継続治療が課題となっている。当地区では、骨折者への骨粗鬆症治療薬を投与管理するかについては検討課題であるため2012 年先進的な村山地区術後病診連携について石井先生に講演いただいた。

 多くの受傷者は、生活不活発病の増悪状態で退院する。受傷前から介護保険サービスを利用している場合、認知機能障害や運動機能の維持向上、転倒骨折対策のプランの追加、例えば、住宅改修・通所・訪問リハビリの利用の検討が必要となる。また、特定高齢者や虚弱高齢者の介護予防は、骨粗鬆症の治療継続同様に重要な課題である。医療機関でリハビリし介護保険を利用できない場合は、継続可能な自主訓練プログラムの提供やそのフォローアップ体制が必要となるが、痛みや禁忌がなければ市町が実施する介護予防教室の活用も動機付けを含め有効と考えられる。

 術後に認知症の認知機能障害増悪や術後せん妄による術後認知障害の出現・遷延で認知症について初めて意識することも少なくない。また、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)は、家族に衝撃を与え自宅への退院を困難にする要因となる。受傷前にBPSD で介護負担が大きい場合には、家族は受傷を期に施設入所を選択し、ケアマネより虐待に関する情報があれば医療機関は、施設入所を勧めざるを得ないこともある。認知症の治療は、転倒骨折のリスクを軽減させるEBM もあり、治療ケアは、包括ケア・今後開始される認知症パスとのリンクも課題となる。

 今回、2013 年度データマイニング委員会は、術後56 日退院というアウトカムから脱却し新たなアウトカム指標を生み出すことも目的の一つであった。そして患者用パスの作成が最終目標であった。その完成は、2014 年に持ち越したが、汎用に使用される指標で受傷前障害状態を層別化することで展望が開けそうである。今後、骨折という人生におけるイベントが地域包括ケアにおいて有用な情報・指針となるようにパスを進化させると同時に患者カルテに一元化されることが課題である。
鶴岡協立リハビリテーション病院
茂木 紹良