第14回 日本クリニカルパス学会(盛岡)
以下のごとく学術講演会が行われました。
日時:2013年11月1日(金)・2日(土)
会場:岩手県盛岡市
盛岡地域交流センター(マリオス)
いわて県民情報交流センター(アイーナ)
会長:北村道彦(岩手県立中部病院 院長)
(三原会長ブログ「
医師会長だより」より転載)
11月1-2日、盛岡で行われた日本クリニカルパス学会に参加してきました。
今回は、鶴岡から総勢17名が参加し、8演題を報告しました。
うち、丸谷先生の報告が優秀賞にノミネートされ、座長賞を3つ頂きました。
鶴岡の地域連携パスが成長していることを実感した学会でした。
以下、鶴岡からの報告
【座長賞】
◆精神科患者の服薬自己管理パスを改定して
鶴岡病院 三原 氏
4月、パス委員会、設立
精神科患者を退院させるには、服薬を自己管理できることが必要である
服薬自己管理パスは従来よりあったが、7日間と限定されていたためほとんど利用されていなかった。また、医療者が患者と共に同じゴールを目指すというパスの概念が伝わりにくかった。そこで、期間を限定せず、アウトカム達成まで繰り返し継続するパスに変更した。また、薬剤師からの服薬指導が必ずは入るよう、服薬指導項目を追加した。さらに、患者用パスを作成し、開始時に説明のうえ配布し、指導中も使用した。
結果
使用数が0から8件へ増加した。
使用した患者の病名は統合失調症、発達障害、認知症であった。
使用期間は23日から8か月、一番多かったのは2か月であった。
アンケート調査では、医療者の86%が、患者の94%が肯定の回答であった。
【座長賞】
◆肩腱板パスの入院日数に伴う改訂とDVDによる患者指導
荘内病院 看護師 疋田仁美 氏
・ | 肩腱板断裂修復術の入院が35日から21日に短縮となったことから、退院後の日常生活の問い合わせが多くなった。 |
・ | 35日間パスから21日間パスへ改定し、退院後の指導用パンフレット、DVDを作成した。 |
・ | 21日間パスでは、術直後当日からバケツを利用した外転装具を術後当日から退院後まで使用する。 |
・ | 工夫: |
バケツのヒモを3編にし、肩の部部にパイプカバーを装着
S字フックで、肩にかけやすくした
パンフレットに写真を多用し、分かりやすくした
|
◆当院における脳卒中患者の自動車運転再開マニュアルの
現状と課題
湯田川温泉リハ病院 大川 氏 ほか3名
湯田川温泉リハビリテーション病院では、自動車運転マニュアルを作成し、それに沿って、運転の可否を判断している。
平成23年10月から平成25年3月間の脳パス患者210名をデータ分析した
運転希望者は 29名(男:35、女:4)
希望者の平均年齢は 男:65.5歳、女:53.3歳
希望者29名のうち、7名(24%)が、運転可能と判断された。
7名のうち、教習所利用で運転が可能となっったのが5人(71%)
運転可と判断されなかった22人のうち、教習所利用で運転が可能となったのは2人(9%)
運動可群と運転不可群との比較では
入院時FIM(運動、認知)ともに有意差があった。
一方、退院時FIMでは、認知項目のみに有意差があった。
退院時高次脳機能障害での比較では
運転不可群に、遂行機能障害、半側空間無視がみられた。
<まとめ>
運転の可否をより的確に判断できるよう、より詳細なデータ分析を行い、クリニカルパス化を図っていきたい。
【優秀賞ノミネート】
◆再発患者データベース脳卒中地域連携電子化パス導入の効果
荘内病院 丸谷先生
2010年1月から2年間に登録された脳卒中患者のうち
維持期へ移行した患者データを解析した。
対象期間の登録患者 | : | 1041名 |
維持期移行例 | : | 742名 |
維持期パス参加患者 | : | 403名 |
維持期パス非参加患者 | : | 306名 |
平均観察期間 | : | 28.6か月 |
1. | 臨床的背景 |
| 維持期パス参加群 :女性の割合:47%、年齢:76.9、退院時mRS:2.87 |
| 維持期パス非参加群:女性の割合:50%、年齢:74.6、退院時mRS:2.61 |
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2. | 維持期血圧管理 |
| 74%が目標となる血圧以下にコントロールされていた。 |
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3. | 再発率・再発期間 |
| 再発率 :パス参加群:7.58%、パス非参加群:11.7% パス参加群で低い |
| 再発期間:パス参加群:15.88月、パス非参加群:9.72月、パス参加群で有意に長い |
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4. | 危険因子の分析 |
| 危険因子の中で保有率が高いのは、高血圧、脳卒中既往、糖尿病などであるが、心房細動が有意に高い結果であった。 |
【座長賞】
◆脳卒中地域連携パスのデータマイニングと集計表
鶴岡地区医師会 遠藤 氏
庄内南部地域連携パス推進協議会では、地域連携パスをIT化しリアルタイムにデータベース化する仕組みを構築している。
地域連携パスには、病病・病診ともに相当数のデータが蓄積され、それらデータを解析するチームとしてデータマインニング委員会を設立した。
データマインニング委員会は、急性期、回復期、維持期、ITベンダー、事務局など多職種、10名ほどのメンバーで構成される。
脳卒中地域連携パスでは、年報というかたちで集計表を作成、地域にフィードバックするとともに、各所に配布している。
◆急性心筋梗塞地域連携パスの導入に向けて
鶴岡市立荘内病院 渡部美穂 氏
心筋硬塞地域連携パスの運用開始までの経過報告
医療者用パスのほかに、患者用パス、指導用パンフレット、自己チェックシートも作成
◆庄内南部大腿骨近位部骨折術後地域連携パスの転記評価 第1報
協立リハビリテーション病院 茂木 氏
4年分のデータ蓄積がある、
2009から2011年の3年間のデータを解析した
各年度の登録数 |
2009年 | : | 217 |
2010年 | : | 242 |
2011年 | : | 242 |
各年度とものデータに大きな差異はない、以下、11年度のデータを示す
受傷時の居住 |
施設 | : | 25% (大腿骨骨折の1/4は施設で発症) |
同居 | : | 67% |
独居 | : | 7% |
日常生活自立度(障害高齢者) |
自立 | : | 36% |
J+A | : | 49% |
B+C | : | 15% |
日常生活自立度(認知症高齢者) |
自立 | : | 44% |
1-2 | : | 28% |
3+4 | : | 28% |
介護保険利用率 |
62% |
要支援1+2:16%、要介護1:17%、要介護2:24%、要介護3以上:43% |
受傷機転 |
転倒 | : | 80% |
受傷前BI100点(%) | : | 31% |
術式 | : | CHS:66%、THR:23%、ピンニング:10% |
行動障害の出現率 | : | 34% |
抑制要行動障害の出現率 | : | 20% |
全期間退院状況 | : | 在宅復帰 75%、非居宅施設入所 5%、転帰・退院先不明 20% |
回復期病院 |
在宅復帰率:86%、施設復帰率:5%、転記不明:8% |
入院期間(中央値) |
急性期:14日、回復期:67日 |
認知機能:MMSEで改善傾向にある
BIの経時的変化 |
平均値、受傷前:80、術後1週:34、2週:42、4週:51、6週:61、退院時:70 |
中央値、受傷前:90、術後1週:30、2週:45、4週:50、6週:61、退院時:75 |
考察 |
| ・ | パスの目標入院期間56日の達成率は10%に過ぎない →目標値設定の再検討が必要 |
| ・ | 術後認知機能障害の改善がみられる |
| ・ | 術後1週間から退院まで、BIの経時的改善がみられる(プラトーにはならない) →退院後も継続した対策が必要 |
| ・ | 運動・認知機能障害重度→老年症候群軽減・介助量軽減を目標 |
| ・ | 認知機能障害軽度~中等度→通所・訪問リハビリ |
| ・ | 運動機能障害軽度~中等度→介護予防、運動器不安定症の治療 |
| ・ | 運動機能問題なし→早期退院の対応(通所リハビリ) |
◆庄内南部大腿骨近位部骨折術後地域連携パスの転記評価 第2報
協立リハビリテーション病院 佐藤 智 氏
パス登録患者467例の受傷前後の生活機能、認知機能の推移を分析
MMSE得点推移で2点以上の向上を術後認知機能障害の改善と仮説し、術後2週と4週での予測モデルとして検証
目的変数:回復期退院時BI
説明変数:
MMSE、退院先、受傷前BI、術後2,4週のBI、管理病院での日常性格機能評価、年齢、問題行動として重回帰分析を実施
<結論>
予後因子として認知機能の推移が大きく影響しており、術後早期からの認知機能評価の重要性が示唆された。
回復期退院後も認知機能改善する可能性があり、訪問リハなどのケアサービスが必要と考える。